2012年5月17日木曜日

レイチェル・カーソン著「沈黙の春」読了

レイチェル・カーソン著「沈黙の春」読了。殺虫剤や農薬による環境への影響を豊富な資料から考察した名著(オリジナルは1962年出版)。
文章量が多く、読後の感触としては、ひたすら執拗に化学薬品の怖さを書き連ねる、少々しんどい本。 多くの化学薬品による悲惨な事例は50年代前後の米国なので、いま現在日本にいる私にはそこまでの実感は少ない。それもあって、しんどい本であった。

しかしそこまで書かないといけない状況だったのだろう。
また、(こういう名著のお決まりかもしれないが)最後に「本書は、すでに古典としての地位を確立したが、その間サイエンス、哲学の大胆な転換は行われず、本書の存在は現代にあってますます切実なものとなっている。」とある。

2010年は「国際生物多様性年」とされ、学術誌もそういう論文が多かった。また関連イベントも多く開かれ、「生物多様性」はいろんなところで扱われた。
カーソンが本書を執筆した時代に比して、現代は生態系の知識は格段に増えている。何かの種を根絶やしにするというアイデアは、フィクションの中であっても「時代遅れ」な感がある。しかし、原発問題などそれでも人間の営みには生態系へ影響するものが多い。(というか、広い意味では生態系とのインタラクションが生きるということかもしれない、程度差はあれど。)何をやっても、どこかに影響はある。その影響が生態系のなかで吸収できるものなのか否か。人間の営みの持つ「業」みたいなものを感じさせられた本であった。

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